戸田の係留船釣りとは
西伊豆の戸田湾には、湾内に係留してある船で釣らせてくれるサービスがあります。
現在は「たか丸」と「ちどり丸」の2つの船宿が係留船への渡し船サービスを行っており、料金は一日(朝~夕方)で2500円と格安。電話をすれば、好きな時間に帰ることができるのも魅力です(お昼ごろは船長が不在のこともありますが)。
戸田の湾内は水深30~40mと非常に深く、川の流れ込みや外海からの潮が入るため、鯛類から青物まで幅広い釣果が期待できます。
また、3方向をぐるっと山に囲まれているため、台風の時でさえ波が穏やかで船酔いしやすい人でも安心です。
たか丸の係留船について
出船場所と出船時刻
今回紹介するたか丸さんの係留船は、御浜崎(みはまざき・西の砂浜側)の近くにあります。
たか丸さんの船宿自体は離れた市街地の中にあり、係留船で釣りをする場合は富士見館という建物の近くの船着き場(駐車スペースあり)に直接集合します。
お客さんがある程度揃い次第、岸壁から小型の船で係留船まで送迎してくれます(岸から2~3分以内です)。
出船時刻は7時前後ですが、日の出の時刻やお客さんの数によって変動するので、心配な場合は確認しておくと良いと思います。
(船長さんが寝坊して遅れる場合もあるぐらいアバウトです(笑))
たか丸の係留船の設備
たか丸の係留船(出典:釣割 たか丸 フォトギャラリー)
たか丸の係留船は大型の船が多く、快適に釣りを楽しむことができます。
船は多少年期の入ったものが多いですが、座って釣りができるので安心です。
ライフジャケットは一応ありますが、持参した方が無難かもしれません。
また、たか丸の係留船には青物などを狙ってコマセを用いた釣りをする客が連日乗船するため、船べり(手すり)が汚れている場合があります。
船の上には水道がありませんので、気になる方は手洗い用の水などもペットボトルに詰めて用意しておくと良いと思います。
- タモ網あり
- バケツあり
- 簡易トイレあり
- 電動リール用の電源なし
- 海水のくみ上げポンプなし
- 竿受けなし
たか丸の係留船の位置
たか丸の係留船は御浜崎(砂浜)の付近に位置しています。
海底は砂地が多いため海底付近に魚はあまり居ついていませんが、表層~中層あたりに多くの魚が回遊します。
私が通っていた頃(5~10年前)は、毎回25cmほどのウルメイワシやマイワシが入れ食いで釣れ、大変良い思いをさせてもらえました。
単発ではありますが、最大35センチほどの大アジが釣れたこともあります。
2010年の夏には本ガツオの入れ食いなども経験しましたので、かなり夢のあるポイントかと思います。
- 水深は35m前後
- 海底は砂地が多く起伏は少ない
- 湾奥に位置し潮通しはちどり丸の係留船に劣る
- 回遊魚が溜まりやすい位置にある
- 回遊ルートのせいかちどり丸よりアジの釣果は出やすい
たか丸の係留船での実釣動画
青物・タチウオなど(秋)
古くからブログを書いておられる青島太郎さん(→ホームページ)の動画です。
戸田湾の湖のように静かな海面や、のんびりとした係留船の雰囲気を感じていただけるかと思います。
この日(2009年の10月3日)はたまたま青島さんの撮影日と自分の釣行日が重なり、隣で青島さんグループが撮影しているのを見ながらの釣りとなりました。
曇天のせいか魚の活性も良く、イナダ・カンパチといった青物や30~35cmの大アジなどがポツポツ釣れて楽しい一日でした。
途中、青島さんたちのサビキ仕掛けにタチウオが掛かったのには驚きました。
戸田湾のタチウオはシラスを食べているためサビキにも食いつくのか、コマセに寄った小魚に食いつこうとしてサビキに絡まるのかは定かではありませんが、係留船でサビキ仕掛けでタチウオが釣れるのは全くの偶然というわけでもなさそうで、数回目にしています。
ヒラメなど(周年)
こちらは同じく青島太郎さんたちが、夏(7月)に55cmのヒラメを釣り上げる動画です。
小サバを餌に釣れたようです。
ヒラメは周年狙うことができるのですが、冬場になると小サバやイワシなどの小魚が釣れにくくなるため、エサの確保が困難になります。
ただ、夏場はアカエイやダイナンウミヘビといった外道の活性も上がるため、ヒラメだけを選んで狙うのは至難の業です。
たか丸の係留船で釣れる魚
釣ったことのある魚
アジ(マアジ)・サバ(マサバ・ゴマサバ)・イワシ(マイワシ・ウルメイワシ・カタクチイワシ) ・マルソウダ・ワカシ・イナダ・ショゴ・カンパチ・ホンガツオ・マダイ・メジナ・シマダイ・ダイナンアナゴ・シロギス・ネンブツダイなど
その他狙える魚
ムロアジ(出典:くろつら WEB魚図鑑)
タチウオ・ヒラソウダ・ムロアジ・シイラ・ヒラメ・クロダイなど
たか丸の係留船でのタックル
竿
たか丸の係留船ではアジ・イワシ・イナダ・ソウダガツオ等の回遊魚が主なターゲットのため、30~60号のビシを用いたコマセ釣りか、サビキ釣りが基本になります。
それに用いる竿は……正直なところ30~60号前後のビシ(オモリ)を背負えるものであれば何でも良いのですが、強いて言うならば長くて適度な硬さのある竿(2m~2.7mぐらいで60号のオモリが背負える竿)が良いです。
たか丸の係留船は長期間海の上に係留してあるせいか、船底に貝殻などが付着している場合が多く、短く柔らかい竿だと魚が突っ込んだときに船の底に道糸やハリスがこすれて切られたり、係留ロープや他の仕掛けに引っかかったりする原因になります。
ソウダガツオやカンパチなどは特に船の下側に突っ込みやすいので、それをいなせる長さと適度な硬さがあると便利というわけです。
とは言え、船の揺れもほとんど無いので船竿には重要な「しなり」もさほど必要ないため、魚の急な突っ込みをかわすためのクッションゴムさえ付けておけば、投げ竿などでも代用できます。
リール
これも正直何でも良いです。ドラグさえ付いていれば多少の大物なら十分に対応可能です。
ただ、イナダ等の青物の遊泳層は頻繁に変わるため、水深計がついたリールだとタナが測りやすくて便利です。
また、ハンドルノブが大きめのリールだとしっかりと握れて力が込めやすく、強い魚の引きや重めのオモリに対しても楽に糸を巻くことができるのでオススメです。
道糸
3号前後を巻いておけば良いと思います。
ただ、潮の流れでオマツリすることもほとんどありませんので、PE2号~6号など切れなければ適当で大丈夫です。
シマノのタナトルのように1mごとに着色されているPEラインを選べば、水深を計りやすくなります。
天秤・ビシ・クッションゴム
係留船での仕掛けは、船釣りと同じ「30~50cmの片天秤+30~60号のビシ(またはコマセカゴ+オモリ30~60号)+短めのクッションゴム+仕掛け」という形が基本になります。
水深は35m前後と深いものの、潮の流れは緩やかなためオモリは30~40号あれば十分です。
しかし、船の下にエサ取り(ソウダガツオ・小型のメジナ・イシダイの幼魚など)が集まっている場合は仕掛けを素早く沈めるために50~60号以上のオモリがあると助かります。
各魚種の釣り方と仕掛け
アジ(春~秋)
マアジ(出典:sfc WEB魚図鑑)
アジをメインターゲットとする場合は、片天秤にウィリー仕掛け、またはサビキ仕掛けが有効です。オキアミなどの大きめのエサにはどうも反応が悪いので、小さな餌(針)が有利です。
夏季の小~中型のアジなら底~中層狙い(けっこうタナが上下します)、大型のアジ狙いなら底付近が良いです。
また、戸田で釣れる大型のアジはほとんどがマルアジ(一般的に食味がマアジより劣るとされている)です。
マルアジ(出典:ユジダル WEB魚図鑑)
しかし、戸田のマルアジはエサが豊富なせいかとても美味しいので釣れると嬉しい魚の一つです。秋ごろに釣れた28cm~35cmのマルアジを食べたところ、脂がのっていて非常に美味でした。
年によっては黒潮に乗ってムロアジなどの南方系のアジが戸田湾に入り込むこともあり、毎年の釣果が楽しみです。ただ、回遊するタイプのアジは、岸壁からのカゴ釣り等でも釣れ盛ることがあるので(ポイントを直撃しなくても自分から泳いでコマセに寄ってきやすいため)、係留船で釣る必要があるかは状況次第です。
カンパチ・イナダ(夏~秋)
片天秤に市販の仕掛け(空針2本、全長2~4m)にウィリーまたはオキアミ餌を付けて狙います(活性が良いときはサビキ仕掛けでも釣れます)。
カンパチは動くエサばかり食べる習性があるので、ウィリーやカブラ(魚の皮を使った疑似餌)をガンガンシャクると水面付近まで追ってきてよく釣れます。
1匹が水面に寄ってくると、他のワカシ・カンパチも続けて追ってくることが多いので、群れの少し下まで仕掛けを沈め、再びシャクリ上げると入れ食いになったりします(水面で誘うと見切られるので、コマセを撒きながら下からシャクリ上げます)。
イナダは警戒心が強いのか水面までは追ってこず、しかも単発でしか釣れないことが多いです。
イナダ狙いにおいては、潮が澄んでるせいか、捕食している餌の大きさの問題なのか、ウィリーよりもオキアミ餌が若干有利です。
サバ・マルソウダ(初夏~秋)
マサバ(出典:ユジダル WEB魚図鑑)
マルソウダ(出典:ユジダル WEB魚図鑑)
サバ・マルソウダは、群れさえ湾内に入っていればサビキ仕掛けでいくらでも釣れます。
反面、ヒラソウダは滅多に釣れません。秋にたまに回遊してくるぐらいで、ほとんどがマルソウダです。
サビキ仕掛けは、堤防用だとハリスが0.6~1号と細めのものが多く、ソウダガツオ等の30~40cm以上の魚には切られてしまいます。
そこで、「ハリスが3号以上の太めのサビキ仕掛け」を選ぶとソウダガツオなどにも対応しやすくなります。
サバやソウダガツオは大きな群れで行動するため、2~3匹以上が同時に針掛かりすることもあり、大暴れして仕掛けを絡ませたり縮れさせたりします。
そのため、仕掛けは多めに用意しておいた方が無難です(船釣りと違い、途中で船長さんから購入することはできませんので)。
イワシ(春~秋)
マイワシ(出典:もぷら WEB魚図鑑)
ウルメイワシ(出典:あらら WEB魚図鑑)
年によって大きく異なるのですが、西伊豆~沼津にはウルメイワシ・マイワシの大群が押し寄せることがあります。戸田湾内に入り込んだときは、マイワシ・ウルメイワシの25cm近いサイズが入れ食いで釣れるのでとても楽しいです。
戸田湾内は波が穏やかなため、イワシの群れが入っているときには水面でパシャパシャと移動している様子を見ることができます。
ただ、いつも水面にいるとは限らず、タナが海面から15m下ぐらいまで落ちる場合もあり、サビキ仕掛けを落とし込みながら、幅広いタナを探ると良いです。
意外なことに、東京湾や相模湾に多いカタクチイワシの群れは、ここ戸田ではあまり釣れることがありません(夜は大量のシラスが湧くため、日中に釣れないだけなのかもしれませんが)。
イワシの群れが大量に入っている時はワラサやブリなどが湾内に追いかけてくることもあるので、不意の大物には十分注意が必要です。
ヒラメ(周年)
ヒラメ(出典:きくやの常連 WEB魚図鑑)
たか丸の係留船付近の海底は主に砂地になっており、ヒラメの好物であるイワシも多く回遊することから、ヒラメが釣れる条件は揃っています。
ヒラメを狙うのであれば、サビキ釣り等で釣った小アジ・イワシ・小サバ等を餌にすると良いです。活き餌としては、よく光り剥がれやすいウロコを持つイワシが一番ヒラメを寄せやすいですが、弱りにくい小サバや小アジも有効です。
ヒラメ自体の数は少ないのですが、戸田湾で釣れるヒラメは60cm以上の大型が多く、ときおり80cmクラスの超大型ヒラメ(俗に言う座布団サイズ)が掛かることもあります。万が一掛かった場合は、船に用意してある大型のタモ網を使用すれば大丈夫です。
使用する仕掛けに関しては、船釣りのように移動しながら水深の変化する根の上を釣ることもないので、特殊な仕掛けは必要ありません。普通の市販品で十分です。
ヒラメ狙いの注意点
ヒラメを狙っていると、ときおり猛毒を持つアカエイや鋭い歯を持つダイナンウミヘビなど危険な外道も釣れるので注意です。
(私はヒラメには出会えず、ダイナンアナゴなどの外道ばかり釣っています。たま~にヒラメも上がっているはずなのですが……)
なるべく外道を釣らないコツとしては、タナを上げることと、元気な活きエサを使うことです。
ヒラメは海底より上までどんどん泳いでアタックしてくる魚なので、外道ばかり掛かるようであればタナを上げるのも有効です。
また、弱って死んだエサを使い続けると、ダイナンアナゴ・ダイナンウミヘビ・アカエイといった腐肉を好む魚が掛かりやすくなります。
乾電池式のエアーポンプを使ってバケツに酸素を循環させて活き餌を活かしておくと、弱るのが遅くなるのでオススメです。
マダイ・クロダイ(周年)
マダイ:出典(ユジダル WEB魚図鑑)
クロダイ(出典:ヒサビッチャ☆ WEB魚図鑑)
船釣りでマダイを狙う仕掛けと同じです。片テンビンにビシ・クッションゴム1m前後・ハリス6m以上に1本針・オキアミ餌で狙います。
釣り方は通常の船釣りと同じように、コマセを撒きつつ底から「仕掛けの長さ+クッションゴムの長さ」分だけビシを上げ、付けエサのオキアミが海底付近に漂うように調整します。ただ、ハリスが長いので他のお客さんの仕掛けや、係留ロープ等へのオマツリに注意が必要です。
そのため、長いハリスを使うのは避けたいところですが、残念なことに、戸田の鯛類は警戒心が強いのか、潮の流れは緩やかなわりにかなり長めのハリスでないと食わないことが多いです。
(長いハリスをソウダガツオに引っ張りまわされると悲惨なことになるので、夏季はおすすめできない釣りです)
本ガツオ・シイラなど(夏)
シイラ(出典:ヒサビッチャ☆ WEB魚図鑑)
夏の戸田湾には、本ガツオや大型シイラなどの大物が入り込むことがあります。私は2010年の8月初旬に本ガツオが入れ食いで釣れる経験をし、興奮で手が震えたことをよく覚えています。
その日は、朝早くからマルソウダばかりしか釣れず期待の薄い日だったのですが、1~2時間ほどコマセを撒き続けているうちに船の周囲をぐるぐると数十匹~数百匹の本ガツオが泳ぎ始め、船中で入れ食いになりました。本ガツオの群れの下にはワカシの大群もついており、本ガツオを釣るのに飽きてそちらを狙う方もおられました。
このように、本ガツオや1mオーバーのシイラが回ってくると通常の仕掛けでは手に負えないので、万が一に備えて大物用の仕掛けを用意しておくと良いです。
本ガツオやシイラは大抵水面近くを泳ぐので、魚の姿が見えたらコマセを水面にコマセを投げ込み続けて足止めすると効果的です。
コマセで興奮状態になった本ガツオやシイラはエサを目掛けて突進してきますので、用意する仕掛けは船釣り用のカツオ用の太仕掛け(付け餌はオキアミ)や、ルアーを用意すれば、基本的には何でも大丈夫です。
同じ回遊魚の仲間でも、イナダ・ワラサはオキアミなどの大きめのエサを好む傾向にありますが、シイラや本ガツオはアミエビなどの小さなエサもガンガン食べます(釣れた本ガツオの腹の中はアミエビでいっぱいでしたし、シイラも船の周りで盛んにアミエビを食べる様子が見られます)。
アミエビが餌になるということは、当然ウィリー仕掛けも有効なのですが(快晴・澄み潮・満腹などの条件が重なり、大きな針・大きな餌を見切ってくるような時には特に有効)、イナダ用のウイリー仕掛け(ハリス5~6号)では切られてしまうことが多く、市販品でオススメできるウイリー仕掛けはあまりありません。太めのハリスと大きめの針を購入して自作する必要があります(しかも需要が少ないため大抵は品薄です)。
まとめ
今回は戸田のたか丸さんの係留船での釣りについて紹介させていただきました。
船酔いの心配もなく大物も期待できることから、なかなか夢のある釣りだと思います。
ただ、湾内なので魚が入り込んでいる時には入れ食いになり、魚が入っていない時はコマセを撒きながら辛抱の釣りになりやすいです。
色々な釣りをのんびりやって、釣れ出したら一気に集中というスタイルが良いかと思います。
しかしながら、全く釣れていない状態からホンガツオの入れ食いのような大物ラッシュが突然来る場合もありますので、コマセは切らさずに誘い続けることが大切だと思います(朝から全く釣れず、午後1時頃に帰りの船を呼んだ途端、他のお客さんにカンパチが入れ食いで釣れ出して泣きながら帰った経験がありますので……!)。
おまけ「あると便利な魚探」
イナダやアジなど魚のタナがころころ変わりやすいので、次に行くときは魚群探知機を買って持って行こうかと思っています。